**みやび通信第16号(通刊第52号) 2004 (平成16) 年2月10日 発行:KAZU**

第 16 号
食への挑戦(2) 果物編その2



(6) ドリアン (durian, パンヤ科)


 マレー半島・カリマンタン原産の常緑高木。熱帯果物の王様と呼ばれます。赤ちゃんの頭くらいから大人の頭位まで、大きさも品種も様々です。幹生果で太い枝や幹に実が着きます。ゴツゴツとした太いトゲのある厚い皮に覆われており、熟すると縦に裂け目ができて、独特の強烈な香りがします。裂け目にそってナタを入れ割ると中に白い果肉が5室に分かれて入っています。
 25年前に百貨店で1個1万円が相場でした。今では少し下がって6000円くらいで売ってます。栽培地でも高級な果物です。(日本ほど高くはないですが) さすがに、これは買って挑戦するには至りませんでしたが、今まで4回ほど食する機会がありました。
 さて、味なんですが、問題はあの強烈な香り。先ず臭くて食べられないという人、なんとか口にできたけれど二度と食べないという人、逆にやみつきになる人の三様で中庸はいないですね。東南アジアの屋台などで売っているものはやはり安物で、タイの水上マーケットで切り売りを食べましたが、これは香りが強く熟れ過ぎでおいしくなかったです。タイ人のツアーガイドが「屋台のはもうひとつ…」と言うくらいですから、おいしいのを食べるには避けた方がいいようです。
 ポイントは数多い品種の中で香りの弱いものを選ぶことと、熟れ頃に食べるということ。味はよく「バナナに香水をふりかけて練った様なもの」と例えられますが、ズバリその通りです。ねっとりしたクリーム状で甘味が強いものです。酸味はありません。未熟だとイモを食っているような感じでおいしくないです。
 生はちょっとという方にはドライフルーツがありますので、こちらで挑戦してみては。十分ドリアンを体験できます。ドライでも香りは強烈です。
 日本人では好きな人は少ないと言われ、日本人で好きだというと現地では珍しがられます。
 さて、私の初体験は学生時代、タイ産の小蛾類の研究のためにタイへ行かれた黒子浩助教授(当時)がおみやげに持ち帰ったものを、研究室の学生と先生で頂きました。品種は英語でgolden pillow と呼ばれるものでカンボジア人の学生が「gigantic!」と驚くくらい大きな果実の品種です。黒子先生曰く香りが弱くて日本人向きということです。本当においしかったです。卒業してからたまたま研究室を訪ねた時に、ちょうど黒子先生が二回目の調査でタイから帰国されたときで、ラッキーにもこのgolden pillowをもう一度食する機会にありつきました。


(7) マンゴー (mango, ウルシ科)



 これも今ではスーパーで売っている果物。ウルシ科の高木でかぶれる人がいるということです。食べてから1〜2日たって症状が出る遅延型アレルギーだそうで注意。モモ好きの私にとっては最初からおいしくいただきました。酸味がなく独特の強い香りと甘味があります。モモの皮がツルリとむけるのに対してマンゴーはズルズルむける感じ、香りがダメな人は別として日本人向けと思います。25年前にやはり百貨店でアップルマンゴーが1個500〜600、フィリッピンマンゴーで1個300円くらいでした。今より若干高い感じでしょうか。


(8) レイシ(ライチ, litchi, ムクロジ科)


 関西ではツルレイシ(ニガウリ、ゴーヤ)を単にレイシと呼びますが、果物のレイシ(茘枝)は中国南部原産のムクロジ科の植物。今では国内産もありますが、主に台湾から生、冷凍、缶詰等で輸入されます。私が食べたのは生。百貨店で量り売りでした。値段は覚えていませんが、そんなに高くなかったと思います。パリパリとした革質の皮をむくと白の半透明の果肉が出てきます。「ブドウみたい」というのが最初の感想。少しの酸味と甘味があり、ブドウと似たところがありますが、果肉はやや歯ごたえがあります。中華料理のデザートに出るので食べた方は多いかと。


(9) ランブータン (rambutan, ムクロジ科)


 レイシと同じくムクロジ科の植物。レイシが直径3センチくらいなのに対して、5センチと大きく毛むくじゃらの果皮。果肉はレイシに似て白く半透明で甘く少し酸味があります。最初に食べたのは14年前、オーストラリアでのワーキングホリデーから帰国した現妻のおみやげの中に何故かランブータンの缶詰が。私的にはまあまあ、余り好きではありません。後にタイ産の冷凍ものを食べました。缶詰の方がおいしいと私は思います。


(10) マンゴスチン (mangosteen, オトギリソウ科)


 世界三大美果、フルーツのクィーンと呼ばれます。外見はカキに似ていますが紫がかった黒で、果皮はコルク質で厚く、中にミカンの袋状の白い果肉があります。日持ちが悪い上に、植物防疫上 (ミバエ〈実蠅、fruit fly〉の幼虫が果実に潜んでいるため) から冷凍品しか国内では味わえませんでした。10年程前に生果実の輸入が解禁になりましたが、残念ながら完全な生ではなく、低温蒸気処理がされています。最初に食べたのは12年前、タイ産の冷凍品。半解凍状態がおいしいということですが、冷たくて味がよくわかりません。「何が世界三大果実じゃ」という感じでした。
 評価がガラっと変わったのはタイで生を食べてから。果皮は堅そうですが、爪を立ててひねるとパカッとふたを取るようにはずれます。ほのかな酸味、上品な甘味、舌の上でとろける感じ、クィーンの名にふさわしい絶品ですよ「生」は。機会がありましたら、是非生のものを食べてください。


(11) グァバ (guava, フトモモ科)

 一時期ジュースが大々的に宣伝されて、名前が知られた果物。加工品がアメリカなどから輸入されています。国内では沖縄や南九州で栽培されているとのこと。ただ傷みやすいのと高級品ではないのでわざわざ空輸されたりしません、主に現地消費。沖縄では一盛りいくらの果物です。沖縄で買った生をジュースにしていただきました。熱帯産の果物に共通の特徴として独特の香りがあり、酸味と甘味、種ごとジューサーで砕いたので少し苦みがありましたが、息子も喜んで飲みました。缶ジュースよりはクセがありますが。


(12) フィージョア (feijoa, フトモモ科)

 ブラジル南部原産の常緑低木とものの本に記載がありますが、私が住んでいたニュージーランドのフラット(アパート)の前にフィージョアの木があり、どう見ても高木というくらい大きかったです。
 グァバと同じフトモモ科でキレイな花が咲くので、ニュージーランドでは庭によく植えられます。キウイくらいの大きさの緑色の果実で熟すると良い香りがしてきます。果肉は黄白色で中心がゼリー状、熟度の見極めが結構難しいですが、いいのに当たると超おいしいです。ニュージーランドでは初夏に店頭に並びます。私が最初に食べたのは落果したやつを拾ってたので熟しすぎ、少しアルコール臭がしました。パイナップルに近い香りで甘味があり、酸味は少ないです。
 日本でもニュージーランド産、アメリカ産が輸入されているそうです。そんなに高くありませんから見かけたらトライしてみてください。


(13) 中国梨 (Chinese pear, バラ科)

 日本の梨と違って、収穫してから置いておく(貯蔵する)と良い香りが出てくるのが特長。収穫直後の実は硬くておいしくないです。収穫期が10月頃で品種によっては春3月ころまで貯蔵できます。日本への導入は明治大正期ということですが、なかなか目にしません。最近は贈答用に出回るようになったので、百貨店等で見かけた人も多いのでは。
 鴨梨(ヤーリー)、慈梨(ツーリー)、紅梨(ホンリー)の三品種が有名で、中でも鴨梨(ヤーリー)は代表選手です。日本人には赤っぽい紅梨が好まれるようです。食べ頃になるまで部屋に置いておくだけで大変良い香りがして、香水代わりになります。学生時代に農場の売店で買って机の上に並べて香りを楽しみました。梨が嫌いなので、食べ頃になったものから人に譲って…。


◎最後に

 まだまだ、他にもありますが思い出に残っているもを挙げてみました。未経験の食材に出会った時には「挑戦してやろう」という気持ちがないとなかなか食べられません。その時逃してしまうと次に出会う機会もなかなか来ないものです。
 熱帯産の果物では、殆どの種類に独特の強い香りがあって、それが食味を支配しているようなところがあります。これに慣れてしまうと食材の選択もどんどん広がっていきます。バナナやパイナップルのように。また、熱帯産の果物には追熟してから食べるものがたくさんあります。未熟で収穫して熟してから食べます。バナナのようにムロに入れるなど特別な処理をする場合と洋梨などの様に単に一定温度のところに放置して熟させるものがあります。チェリモヤは冷やして食べるとおいしいですが、追熟させるのに一定以上の温度が必要で最初から冷蔵庫に入れるといつまでたっても食べられません。木の上で熟したものが一番おいしい日本の果物とこの辺りがちょっと違います。注意が必要です。アボガドを買ってきていきなり冷蔵庫に入れてませんか?