＊＊みやび通信第21号(通刊第57号) 2004 (平成16) 年７月１日 発行：KAZU＊＊
第 21 号
水薫る家族
最近インターネットでの個人情報の流出や迷惑メール等々、ネットでの弊害が世間を賑わせています。勿論、それは大変困ったことではあるのですが、情報発進・情報収集を拒絶してしまうことも問題です。今回は私事ではありますが、ネットでとっても嬉しい出会い（再会）があったのでご報告いたします。
☆「詩とメルヘン」
皆さんはサンリオの「詩とメルヘン」という雑誌をご存知でしょうか。「アンパンマン」のやなせたかしさんが編集していた、読者投稿のイラストと詩とメルヘンで作り上げるという形の雑誌です。一切広告を載せずに非常にゆったりとしたスペースと洗練された誌面構成で愛読者には毎月発売が楽しみだった雑誌でした。マニアックな雑誌でもあったので窮乏状態打開のためにとうとう広告掲載に踏み切り発刊を続けてきましたが、残念ながら2003年６・７月号を最後に休刊となりました。出版の世界では「休刊」とは「廃刊」と同義です。「詩とメルヘン」は30年の歴史を閉じたことになります。僕は大学卒業後から結婚するまでの８年間、この雑誌を講読しました。カラーインクの魔術師永田萌さん、色鉛筆画のきたのじゅんこさん、「魔法ばなし」の東君平さん、「風の旅人」の葉祥明さん、「停まらない電車」の川添エイコさんら多くのイラストレーターと詩人を育ててきた雑誌でもあります。この雑誌を通じて広島の女の子と文通したこともありました。
☆出 会
「詩とメルヘン」には毎月読者プレゼントがあります。1985年のある号の読者プレゼントに「水薫る家族」（鈴木英子著）という歌集がありました。これに応募して見事当選しました。ちょうど俵万智さんの「サラダ記念日」が爆発的に売れる前だったと思います。届いた歌集はＡ５判の70ページ余りの本でした。銀色の表紙に水色の見返し、表見返しには著者の自筆の短歌があり著者謹呈の栞がはさんでありました。今では繰り返し読んだので表紙はかなり傷んでいます。
「水薫る家族」新鋭歌人シリーズ�機櫚А［詭擶兒辧｜�
牧羊社、1985年４月刊
著者の鈴木英子さんは1962年生とあり、同年代ということもあって共感する歌が多くありました。
○樹は風によりそふあはれ水薫る家族へわれもやさしく還る 英子
○路地裏のちいさき窓より空仰ぐ星なきこともわれは知りつつ 英子
○母が愛するわが黒髪と襟足を君にゆるせばかなしく二十歳 英子
☆再 会
それから二十年の歳月が流れました。今個人向けインターネットプロバイダでは「ブログ」（Web Log）が流行りです。僕が使うＡＯＬでも三月からAOL Diary が利用開始になりました。ここでブログ巡りをしていて、たまたま、やそおとめさんの「朱華(はねず)掲示板」のその日の第一行目に「鈴木英子」さんの名前を見つけました。「あれっ」名前が鈴木英子さんで短歌を詠んでいるのならひょっとしてと思い、やそおとめさんの掲示板に書き込みました。やそおとめさんにヒントをいただいて、たどりたどり、鈴木英子さんのメールアドレスを見つけて思い切って「エイッ」とメールを送りました。
同日返事が来ました。鈴木さんのメールの第一声が「メール、ありがとうございます。びっくりしました！」でした。僕もびっくりしましたが、鈴木さんも驚かれたと思います。
インターネットで訳のわからぬ輩からのメールが多い中で本当に嬉しいメールでした。AOL Diary とやそおとめさんに感謝、感謝。この世にインターネットがなかったら決してなかった再会でした。
☆さいごに
鈴木英子さんは第二歌集「淘汰の川」（ながらみ書房刊、1992年）を出され、現在第三歌集を準備中とのことです。最後に頂いた「淘汰の川」から
○隣国へ草を求めてマラ川を淘汰の川をヌーが渡れる 英子
○わたくしが歌うたう夜はああ君もやさしく誰か抱きているや 英子