**みやび通信第23号(通刊第59号) 2004 (平成16) 年9月20日 発行:KAZU**

第 23 号

秋の美声〜アオマツムシ




 九月も半ばを過ぎて、朝夕が涼しくなってきました。あちこちで秋の虫たちの鳴き声も目立つようになります。都市部ではツヅレサセコオロギ、エンマコオロギ、ハラオカメコオロギなどの声を聞くことができます。淀川の堤防に出れば更に種類は増えます。少ないながらマツムシの声も聞くことができます。独特のチンチロリンという声は虫を余り知らない人でもすぐにわかります。スズムシは都市部周辺では無理ですが少し都会を離れて山野に入ると野生のスズムシの声を聞くこともそれほど難しくはありません。

 さて、最近都市部で増えている鳴く虫にアオマツムシ(Calyptotrypus hibinonis)があります。アオマツムシは樹上性の昆虫でコオロギやスズムシ、マツムシが草むらで鳴くのに対して、樹上の1.5メートルから2メートルくらい高さで「リーリーリー」と高い声で鳴きます。(鳴き声をどうぞ。Quick Time Movie形式です) その鳴き声は日本のこれまでの風情を感じさせる声とは異なり、うるさいと雑音的に片付けてしまう人もいますが、非常に甲高く大きな美声で私はスズムシやコオロギの声よりも大好きです。

 このアオマツムシはマツムシ科で日本のマツムシが褐色なのに対し、その名の通り草色をしています。もともと日本にはいませんでした。樹上に生みつけられた卵が中国から樹木と共に冬の間に侵入したと考えられています。最初に確認されたのは1898年東京赤坂で、その後樹木とともに広がり、今では都市部を中心に九州北部から東北南部の多くの府県で確認されています。



背面から。前翅だけを立てて鳴きます。


 体長は18〜25ミリくらい、樹上で葉を食べて生活しており、メスは産卵が近づくと木の葉でシェルターを作って中に潜みます。オスは鳴き始めの頃はかなり甲高い大きな声で鳴きます。どうも縄張りを敷いているようです。メスがシェルターを作って産卵の準備を始める頃はオスはメスのすぐ近くに陣取って「リーリーリーリーリー」と優しく鳴くようになります。近づいてくるものには結構果敢に挑んできます。一般には飛ばないとされているようですが、夜の街灯や人家の窓に飛び込むことが報告されています。
 涼しい曇った朝など、太陽の光が差してこない日には朝の10時くらいまで鳴いていることがあるので夜声を聞いたなら、明るくなってからそっと近づいて見てください。よ〜く捜すとその姿を見ることができます。好む高さは先にも書いたように1.5メートル前後。写真撮影には脚立は必需品です。また、アオマツムシばかりに気を取られていると蚊にボコボコにされるのでご注意を!



仲睦まじく