**みやび通信第24号(通刊第60号) 2004 (平成16) 年11月14日 発行:KAZU**
第 24 号
聖天さん
貨物線の線路を越えて左側に「
福島聖天通商店街
」があります。この商店街の左右の店舗を見ながら進み、あみだ池筋と交差する最初の信号を渡ります。商店街はさらに続き次の信号を渡って右手に進むと地元で「聖天(しょうでん)さん」の名で知られる如意山了徳院という東寺真言宗の寺院があります。
このお寺は小さい頃、母方の祖父母の家から徒歩5分と近くにあり、祖母といっしょに、従妹たちといっしょに何度も訪ねた思い出の場所でもあります。当時は小さいお寺ながら鳩と亀のいる大好きな遊び場所でしたが、昨年、今年と再発見の年となりました。今回このなつかしい場所をご紹介します。
●由 緒
「福島聖天」「浦江聖天」と呼ばれるこのお寺は先にも書きましたとおり、如意山了徳院というのが正式な名称です。場所は大阪市福島区鷺洲2丁目にあり、福島駅からの聖天通商店街はかつての参道でした。寺院のしおりによりますと開山は不詳ですが江戸時代元文年代(1730年代)、高野山善寿院より来られた宥意上人を中興の祖と崇め、御本尊は聖天尊(十一面観音菩薩)で海岸地帯にあった浦江の海から漁師の網にかかって上がってこられたとされています。大阪府の文化財に指定されている山門、近年新しくなった本堂、鐘楼、水手向け不動明王、藤棚そして池が境内にあります。戦災で山門以外は殆どが焼失し、再建されたものだそうです。
●思い出
聖天さんに行くときはいつもパン屑か麸を持ってでかけました。私のお目当ては池の亀でした。現在の池は最近手直しされたようで、コンクリート打ちされて余り昔の面影はないのですが、池の中州に橋が渡され祠には弁財天が祭られ、池の中央には大きな龍王があり、水掛け不動さまとこの龍は子供には怖い存在でした。池の周りには柵が設けられており、そこからのぞきこんで、パンや麸を投げてやると亀が泳いで来て食べました。中州のあたりには亀が甲羅干しをしていました。野生の亀ならのぞきこむとすぐに水の中に入ってしまいますが、聖天さんの亀はのぞいても悠然と甲羅干しを続けていて好きでした。亀の種類は全部クサガメだったでしょう。また、当時は鳩も多くいました。最近はどことも鳩は糞公害で追い出されて少なくなりました。鳩もパンを投げると沢山やってきました。
●芭蕉句碑
江戸時代湿地帯であった浦江はカキツバタの名所として知られていたそうで、松尾芭蕉が二度目の大阪への旅で貞享5年(1688年)四月に大阪の門人保川一笑を訪ねて、この時に詠んだ句が句碑となって残っています。
杜若 語るも 旅のひとつ哉 芭蕉
句碑は文化十一年(1814年)に俳人山津人が主宰する月夜庵社が建立したもので、大きな石に刻まれていますが、今は判読が難しいくらいの状態です。寺では新たに記念の句碑をその隣に建てています。残念ですが今ではカキツバタを見ることはできません。戦後栽植されたそうですが活着せず、今はアヤメとキショウブが植えられています。
わざわざここを訪ねていくような大きなお寺ではないのですが、お近くにお寄りの際には訪ねてみてください。梅、藤、アヤメ、アジサイと花も迎えてくれます。特に藤は見事ですよ。