**みやび通信第31号(通刊第67号) 2006 (平成18) 年1月5日 発行:KAZU**
第 31 号
草創(1)〜表紙画その1〜
草創とは
「草創」は1981年私と友人正吾氏の2人が発起人となり、友人4人で創刊した文芸同人誌です。発行は季刊で年4回(3、6、9、12月1日)発行、体裁はB5版。本文は当初は孔版(ガリ版)刷り、後にオフセット・コピー版としましたが、表紙は最終号以外は孔版刷(孔版版画・プリントゴッコ)で作成しました。
創刊は1981年、私が大学を卒業した年の3月1日で、1993年夏号をもって休刊するまで50号を発行しました。その間多くの会員の作品を掲載、また若手作家志望者、研究者、様々な分野で働く方々に原稿を依頼してその作品や思いを綴っていただきました。
創刊以来25年が経過して初期の冊子は劣化し始めましたので、これを機会に表紙・内容を含めて記録に残せるように「みやび通信」にその一部を掲載していきたいと思います。
まずは表紙の画から。表紙画の印刷担当は私で、原画は様々な方に描いていただきました。中には今見るとよくもまあこんな作品を載せたことだと赤面するものもありますが、文部省認定孔版技能検定保持者として蝋原紙と和紙を駆使して作った初期の作品には思い入れがあります。後期は原画をより忠実に再現できるように理想科学のプリントゴッコB5セットを購入して印刷したものもたくさんあります。
今回は1981年から1986年までの表紙画と技術的なポイント解説、実際に掲載した「表紙のことば」をご紹介したいと思います。なお、特に断りを入れない限り著作権の有するものですので無断転載、直リンクはご遠慮くださいますようお願いいたします。
1981年
初年の表紙はアートヤスリによる立体製版が中心。この夏号は墨絵の原画をトレスして蝋原紙1枚に製版した。1版1色刷り。紙は色上質の濃クリームの中厚口。
「表紙のことば」
題字 雪鈴、絵 正吾 “あさがお”
1982年
2年目の表紙もアートヤスリによる立体製版中心だが、冬号では蝋原紙を使ったシルクスクリーンを併用。用紙はミューズコットンの黒の厚口。シルクスクリーンのインクは工作用の糊に水彩白絵の具を混ぜた自家製。
「表紙のことば」
昔、白鹿がいた。そして尾は長かった。
題字 雪鈴
1983年
3年目もアートヤスリによる立体製版が中心だが秋号では薬品による化学製版(毛筆原紙)も併用。冬号では写真をトレスして紺と茶の2版2色刷に仕上げた。紙は上質四六判110kg。
「表紙のことば」
MIE。勤務先の社屋で子を産んだ日本ネコ。色はトラ。写真のモデルになってもらった。今回はそのフォトから。アートヤスリによる立体製版。KAZU
題字 雪鈴
1984年
「表紙のことば」
創刊号〜4号までは模写、以後オリジナルを続けたが、今回は久しぶりに模写。原画は大学の友人であり、また会員でもある○○靖子さんのもの。モデルはオスのシャム猫「ランディ」。画材は水彩とパスである。
さてスミ版はアートBヤスリ立体製版、ネズミ版は毛筆原紙、黄緑はXC、群青はXBの4色刷。用紙はミラーコートを使ってみた。どれ程原画を再現できたか…。KAZU
題字 雪鈴
1985年
「表紙のことば」
私が学生時代に塾の講師をしていた時の生徒も大半が二十歳を過ぎた。Aちゃんもそのひとり。十九歳で結婚、奇しくも姓が同じになってしまったが、彼女の絵のセンスはキラリと光る。今年頂いた年賀状の絵を拝借した。
スミ版はXA、XB、絵A。赤版はXBとアートA。クサ版・アイ版は毛筆原紙である。4版4色刷。KAZU
題字 雪鈴
1986年
1986年は創刊5周年で絵を描いていた会員○○洋子さんに表紙画をお願いした。パスや油彩を使った原画で孔版画で再現するのにかなり苦労した。
「表紙のことば」
五周年記念号を飾る表紙は会員の作品。この表紙のために描かれたもの。画材はパスで印刷では再現の困難なもののひとつである。スミ版はXA、XB、黄版、肌版は絵画Aによる。インクにはメジュームを多目に入れ色調を整えた。KAZU
表紙 洋子
題字 雪鈴
「表紙のことば」
色紙の上に色刷りするのは大変苦労する。白い紙の上で「いける!」と思った色が、いざ刷ってみると全然ちがったりすることも。スミ版はXA、XB、クサ版・黄緑・白版は絵画B。用紙は東洋コットンのレモン。KAZU
表紙 洋子
題字 雪鈴
この秋号は題字部分はヤスリ製版を使ったが、画の方は毛筆原紙だけを使ってみた。毛筆原紙は和紙に樹脂が塗ってあり、これを毛筆につけた薬品で溶かすことによって製版する孔版用の原紙。やわらかい面塗りが簡単に表現できる。半面重厚さがあまりないので、この作品は失敗かなと思っている。
「表紙のことば」
今回は原画が油彩で、おまけにカスレがあり、全く手さぐりの状態で製版した。結果は原画の形と色をうつし取ったのみに終った。作者からの小言がこわい。KAZU
表紙 洋子
題字 雪鈴
「表紙のことば」
今年一年間表紙を描いていただいた○○洋子さんの最後の作品。彼女からの希望でキャストコートを使ったが、これがひとつのミスだったようだ。紅赤、青、アイの三色に罫線は黄とネズミの二種類を作ってみた。お手元にはどちらが届いただろうか。画の重厚感が足りなかったように思う。KAZU
表紙 洋子
題字 雪鈴
(次号につづく)